九州の男性がカフェインを大量に摂取し中毒死した、との解剖結果が明らかになった。カフェインは日常的に口にする食べ物や飲み物にも幅広く含まれる成分だが、健康被害のリスクを指摘する声もある。カフェインとどう付き合えばよいのか。
死亡したのは夜勤のある仕事に就いていた20代男性。解剖した福岡大の久保真一教授(法医学)によると、夜勤明けで帰宅し、嘔吐後に死亡した。血中のカフェイン濃度が致死量に達しており、死因は「カフェイン中毒」と判断した。
カフェインは心拍数の上昇や興奮、震え、吐き気などの急性作用があり、数グラム~10グラム程度摂取すると死に至るとされる。眠気予防の市販薬は、1錠あたり100ミリグラム程度のカフェインを含み、食品でもお茶やコーヒーなどに含まれている。体内で分解され、約3時間で半減する。
米国では、14歳の少女が大量のカフェインを含む飲料を飲んだ後に不整脈で死亡したとされ、ほかにも死亡例の報告がある。国内でもカフェインを含む市販薬を大量に服用して自殺を図った例が報告されている。
今回死亡した男性は「眠気覚ましのため」として、1年ほど前から複数のカフェイン入り清涼飲料水を常飲していたという。胃からは粉々になったカフェインを含む錠剤が見つかった。久保教授は「飲料と薬を短時間に併用した可能性や、継続使用が原因になった可能性がある」と話す。
医薬部外品に指定された栄養ドリンクは「滋養強壮」など効能効果をうたうことができる。一方、いわゆる「エナジードリンク」と呼ばれるものを含む、カフェイン入り清涼飲料水は効能効果はうたえないが、「目覚め」といった売り文句の商品もある。1本あたり数十~150ミリグラムのカフェインを含むのが一般的だ。男性は、約150ミリグラムのカフェインを含む清涼飲料水を飲んでいたとされる。久保教授は「手軽に買えるため、ついつい反復服用してしまう。死に至らないまでも中毒に陥る危険もある」と警鐘を鳴らす。
エナジードリンク入りのカクテルも若者に人気だ。福岡市の男子大学生(21)は「おいしいし、炭酸入りで飲みやすい」と、カラオケボックスや居酒屋でよく注文すると言う。
だが、30年以上カフェインを研究する東京福祉大短期大学部の栗原久教授(神経行動薬理学)は「アルコールとカフェインの同時摂取はよくない」と指摘する。カフェインの作用で脳が酔いを感じなくなり、飲酒量が増える恐れがあるためだ。急性アルコール中毒になることもあるという。米国疾病対策センター(CDC)も、カフェイン入りのアルコール飲料は「通常の飲酒に比べ3倍ほど過剰飲酒になりやすい」としている。米国食品医薬品局(FDA)は2010年、「生命を脅かす可能性がある」として、カフェイン入りアルコール飲料を市場から回収させた。
医薬部外品の栄養ドリンクは、医薬品医療機器法で100ミリリットル当たり50ミリグラムと上限が定められている。一方、食品としては「過去に健康被害の報告がない」(厚生労働省)として、摂取基準はない。世界保健機関(WHO)は2001年、妊婦について、「1日コーヒー3~4杯までにするべきだ」との目安を示した。カナダ保健省も、健康な成人の摂取量は「1日400ミリグラムが目安」とし、子どもや妊婦の過剰摂取に注意を促した。
国内でも、清涼飲料水には一度に多く飲まないよう注意書きを付ける商品があるほか、市販の眠気防止薬にはカフェインを含む飲料と同時に服用しないよう記載がある。厚労省は「食品による被害や含有量の実態を把握し、対応を検討したい」という。
カフェインの大量摂取による死亡は非常にまれといわれても、実際に死亡例がでてしまうと、心配になりますね。例えば、自分にとっての安全なカフェイン量とはどのくらいなのかとね。
欧州食品安全機関(EFSA)が2015年5月27日に発表した、カフェインの安全性に関する科学的意見書に記載されているが、健康な成人が摂取しても安全と考えられるカフェインの量は体重によってかなりの幅があり、体重40㎏の人と体重80㎏の人と比べると倍の許容量がある。そして、体重40㎏の人は缶コーヒー1本、またはエナジードリンク1本でも、安全な1回量を越えてしまうことになる。
カフェインの半減期は3時間と言われているが、安全な1回量以下でも、短時間のうちに繰り返し摂取すると、体内にあるカフェインが代謝・排せつされる前に新たに取り込まれることになるので、血中濃度が上昇することに注意がいるようだ。
ただ、個人差があり同じ体格なら安全なカフェイン量も同じとは限りません。なぜなら、カフェイン感受性は人ごとに異なるようです。もし、摂取した後に不快な症状を感じたら、あなたはカフェイン感受性が高いといえます。健康な成人には有益な量のカフェインでも、感受性の高い人には不眠や頭痛などの害をもたらすようです(カフェイン不耐症)。
カフェイン感受性に影響を与える要因としては、年齢、病歴、医薬品の使用、心身の健康状態などが知られており、子どもはカフェインに対する感受性が高く、女性より男性の方が感受性が高い可能性も示されています。さらに近年、いくつかの遺伝子がカフェイン感受性レベルに関係していることが明らかになりました。
例えば、日本人においては、4人に1人が、カフェイン150mgを摂取した後に、不安感が高まる等の害が現れる可能性が高い遺伝子を持っていることが示唆されてもいます。
また、米国人12万人を対象に、カフェインを摂取したときの反応と摂取量に関係する遺伝子を探した研究では、カフェインの代謝にかかわる遺伝子など、計6個の関与が明らかになっています。
すでに日常生活になくてはならないものになっているカフェインですが、安全とされている量が意外に少ないことに驚いたかと思います。取りすぎは健康被害をもたらすことを忘れずに、上手に摂取することが大切なようです。
今までの摂取状況で異常が出ていないので、今後も安心してコーヒー等を飲めるようです。