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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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高齢者増でも老人ホームは閑古鳥?

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 日本は、4人に1人が65歳以上という社会情勢を受け、老人ホームや高齢者住宅のニーズが急拡大している。全国有料老人ホーム協会の調査によると、有料老人ホームの数は2013年7月時点で過去最高の8,424件。3年で約1.6倍という急増ぶりだそうだ。

 その一方で、帝国データバンクの調べでは、老人介護事業者の倒産件数は過去最悪となった2013年の46件に引き続き、2014年も45件と高水準で推移している。絶対数の不足が指摘されている老人ホーム・介護施設なのに、事業者の破綻が増えるという、一見矛盾した現象があるようだ。
 
 201410月1日、長野県諏訪市を中心に有料老人ホームや高齢者集合住宅を運営する「聖母の会福祉事業団」(登記上の本社は東京都八王子市)が、長野地裁に民事再生法の適用を申請した。その6日後、諏訪市文化センターで開かれた債権者説明会は騒然となった。
 
 負債総額は17億円。それには地元信用金庫、地銀、政府系金融機関などからの借入金に加えて、当時施設に入居していた128人が支払った保証金も含まれていた。

 会社側はこの入居者の保証金の債務、総額5億1,100万円が再生債権になると説明。再生債権とは再生計画がまとまるまで弁済が一時棚上げされる債権で、再生計画の内容によっては大幅なカットがあり得る。入居者やその家族が「預けているだけ」と思っていた保証金の一部が返ってこない事態に、会場では「詐欺だ」、「だまされた」などの怒号が飛び交った。スポンサー候補として出席していた企業に詰め寄る者も出た。
 
 聖母の会福祉事業団は、れっきとした株式会社で、民間の営利企業である。資本金2,000万円。代表取締役の鈴木丈史が筆頭株主となっている。諏訪市で1993年に介護付き有料老人ホーム「セント・ベル諏訪湖」を開業したのを皮切りに、2002年から09年にかけて4つの高齢者集合住宅を開設した。
 
 ただ、開業当初から、バブル崩壊の余波をうけて入居者が少ない逆風のスタートだったようだ。こういった施設は、土地建物を自社で取得する「自社物件」ケースと、施設は別に所有者がおり介護事業者が借り受ける「賃借物件」タイプがあるが、セント・ベルは自社物件。金融機関からの借り入れで物件の取得資金をまかなったが、入居者数がもくろみを下回り、支払利息など金融負担が重くのしかかったという。実際、201410月時点の借入金は10億7,100万円で、年間売上高を大きく上回る水準にあったようだ。
 
 「自社物件は負担が重い」との反省もあったのか、2000年代に展開した高齢者集合住宅4施設は賃借物件だった。しかし、これらも軌道に乗ったとは言い難い。諏訪市内や周辺地域に同じような施設がどんどん設立され、競争が激化。入居者が一向に増えない事態が続いたようだ。
 
 社内データによれば、高齢者集合住宅の稼働率は最も高いもので88.88%。低いものだと40%となっている。施設の低稼働は業績低迷に直結。最近の経営状況をみると、2012年から3年間の年間売上高は4億5,000万円、3億9,000万円、5億7.200万円で、一見持ち直したように見えるが、収益面でみると一度も経常黒字になることはなく、2億5,000万円以上の赤字を累積していた。

 同業者間との競争で赤字経営が続く聖母の会を、更に窮地に追いやったのが入居者の死亡に伴う保証金の返還負担だったようだ。このような高齢者向け施設の場合、入居者は最初に一定金額の保証金を入金することを求められる。保証金の制度には2つのパターンがあり、1つは入居期間とともに償却を進め、ある一定の期間を過ぎると返還金はゼロとなるタイプ。もうひとつは、入居者死亡などで契約期間が終了した後、全額返還されるタイプ。
 
 全額返済タイプの場合、入居者の死亡が増えると、当然、保証金の返還という事業者側からみればキャッシュアウトが増える。本来、新たな入居者が入ってくることでキャッシュインし帳尻が合うのだが、入居率を見る限り苦しい状況であったことがわかる。おのずと新規入居者へは保証金のディスカウントを余儀なくされ、採算悪化は負のスパイラルを描くことになったようだ。
 
 最終局面での資金繰りは、まさに綱渡りだったようだ。ローンの返済も滞るようになり、聖母の会は一部債権者による差し押さえを受けることとなる。診療、介護報酬など受け取るはずの約4,700万円が差し押さえられ、口座に入金されなかった……等々。これがダメ押しとなり自主再建を断念、民事再生法の適用申請に至ることとなった。
 
 前述の債権者説明会が混乱したのには、もうひとつの事情がある。定められた保証金を上回る金額を自主的に預け財産の管理を事実上聖母の会に任せていた入居者や、既に死亡などで入居者は退去したが保証金の返還を受けていなかった家族がいたのだ。入居者債権者一覧によると、保証金の債権は1件当たり100万円から200万円のものが多いが、なかには1,000万円を超える金額もあった。銀行預金の感覚で預けていた金が返ってこない。入居者や家族が激怒したのは、こうした背景もある。
 
 高齢者向け施設の需要の急拡大が見込まれている中で、事業者の経営破綻が増える理由は、聖母の会の事例が示すとおり、金融面でのサポートが難しいことが挙げられる。事業者が銀行などの金融機関に設備投資の融資を頼むケースは多いが、通常の住宅や病院と比較してまだ制度が確立されていないことから、積極的な融資が受けられているとは思えない。
 
 銀行側から見ると、融資に消極的にならざるを得ない理由がある。介護事業は、介護報酬の引き下げや予防介護への転換など国の政策に大きく影響されるため、経営推移の予見が難しい。また入居者の募集の面でもマンションとは違い数カ月で「完売御礼」とならないため、資金繰り悪化による事業者の破綻リスクが比較的大きくなりがちになる。従来の不動産融資とは異なった判断を要するのが多いようだ。
 
 さらに入居保証金は、将来の負担増加を避けたい入居者や家族にとっては安心感のある制度だが、事業の安定性から見れば、一定期間ごとに利用料を払う「家賃」制度の方が理にかなっていると指摘する専門家もいる。急速に拡張する高齢者施設のニーズに対して、事業者側の経営体力、金融機関の知見、行政側の制度などがうまくかみ合っていないのではないかという疑念がぬぐえない。
 
 では、現時点で有料の高齢者施設を選ぶ場合、どのような点に注意すべきか。
 
 まず各都道府県の保健福祉局などが公表している「重要事項説明書」を確認すること。これには各施設の状況が記されており、誰でもホームページなどで閲覧が可能。室数と定員が示されているので、事業者側に現在の入居者数を聞けば、入居率を自分で計算できる。一概には言えないが、おおむね80%以上であれば経営環境は安定していると言えそう。入居率を左右するのはその施設が「介護」サービスを提供しているかどうか。現在人気なのは「介護付き」物件なので、将来の入居率を予想する上でもポイントとなるようだ。
 
 さらに重要事項説明書では、従業員の配置もしっかり確認しておきたいものだ。職員体制の項目で、職員1人あたりの入居者数や、看護、介護職員数、常勤、非常勤などの雇用状況が記されている。
 
 入居保証金の保全状況も確認できる。現在は法律によって500万円以下は保全措置が取られているが、2006年以前に設立された施設は今回の聖母の会のように保全されていないケースがある。(※ 事業者によっては2006年以前であっても保全措置を自主的に取っている)
 
 また、500万円を超える高額保証金も、不動産投資信託(REIT)が出資しているケースでは保全されていることもあり、チェックが必要だ。
 
 いずれにしても終(つい)のすみかになる可能性がある物件。しっかりと情報収集をして、場合によっては家族だけでなく専門家にも意見を求めて、細心の注意で選択したいものだ。(日経新聞、帝国データバンク等より)





 日本での有料老人ホームは、4人に1人が65歳以上という社会情勢を受けて、2009年から2013年の数を見ると、4千余りから8千余りと、5年で倍増しているが、老人ホームの重要事項の確認は絶対に必要なようだ。

 私の場合は、フィリピンの滞在先が終のすみかとも考えていないが、暖かい国の静かな所で、のんびりと犬や猫と戯れたり、ガーデニングをしたりと、過ごせる方が良いようだ。












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