ここのところ暑苦しい夜が続き、十分な睡眠をとることが難しいと感じている人も増えているのでは?暑さに負けず、健康と活動的な毎日に欠かせない質の良い眠りを手に入れるにはどうすればいいのか? 睡眠環境コーディネーターの中野祐三子さんに聞いた、蒸し暑い夏の夜の悩みを解消するテクニックを紹介しよう。
①夏の夜、多くの人が寝苦しくなる原因は「温度」と「湿度」だ。高い温度が発汗を招き、発汗が湿度を高め、その悪循環が眠りを妨げる。「室温28℃、湿度60%を超えると睡眠に悪影響が出るといわれている」(睡眠環境コーディネーターの中野祐三子さん)ので、夏の夜の快眠術の第一歩として、まずは温度と湿度を快適に保った睡眠環境づくりを試みよう。
眠れる寝室づくりは、実は朝から始まっている。夏の寝室の暑さの一因は、日中に室内に差し込む熱い日差しにより、壁や寝具に熱が蓄積され、その熱のために就寝時間になっても室内の温度が下がりきらないことにあるという。次のような工夫をして、できるだけ日中、室内に熱がこもるのを防ごう。
(1)窓に遮熱シートを貼る。
(2)遮光・遮熱カーテンにする。
(3)窓の外に遮光ネットやすだれ、緑のカーテン(つる性の植物をネットに這わせたもの)をかける。
(4)日中はカーテンを閉める。
また、ギラギラとした日が差す窓のすぐ近くにベッドが配置されている場合は、位置を変えるか、窓から少し離すことで寝具に熱がこもりにくくなる。部屋の広さに余裕があるなど環境が許すなら、ベッドの配置を変えてみよう。
夕方帰宅したら、まずは換気をすることも大切だ。外気が室温よりも涼しくなった頃を見計らい、窓を開けて外気を取り込み、寝室にこもった熱を逃がそう。寝室内の空気を動かすことが大切なので、ドアも開けて空気の通り道をつくり、寝室全体の空気を入れ替えよう。
②エアコンは就寝直前につけるのでは遅い。人間は、かいた汗が蒸発することで体温を下げ、眠りに入っていくが、エアコンをつけたばかりで十分に冷えていない高温多湿の空間では、汗が蒸発しづらく眠りにつきにくい。また、寝る直前にエアコンをつけると、室内の空気しか冷やせないので、タイマーが切れたとたんに壁やクローゼットなどにこもっていた熱が出てきて室内の温度が上昇し、目が覚める原因となってしまうためだ。
床につく1~2時間前にはエアコンをつけて、寝室の家具や壁、寝具をクールダウンさせておこう。クローゼットや押し入れ、引き出しにも熱がこもっているので、これらはいったん開けた上で寝室を冷やすのがよい。
③熱帯夜でもぐっすり眠るためには、寝室の温度・湿度を適度に保つことが重要。夏は室温26℃前後、湿度50%前後が適当といわれている。ただし、冷たい空気は重くて下にたまるので、部屋の上の方と下の方では2~3℃差が出る場合がある。それを考慮し温度設定を考えよう。
冷房効率を考えるなら、扇風機やサーキュレーターを併用し空気の循環をよくして温度ムラをなくすと良い。
ただし、エアコンの性能や住宅の断熱性には違いがあるので、室内に温湿度計をおいて、自分が快適と感じる温度・湿度を見つけよう。
寝つきだけ良くしようと最初の1時間だけエアコンをつける人も少なくないが、この場合、深い眠りに入る前にエアコンが切れ、部屋が暑くなることで目が覚めやすくなり、眠りのリズムが乱れてしまう。
寝入ってから約3時間のあいだに、新陳代謝を促し細胞の修復・活性化を行う成長ホルモンが多く分泌されるので、タイマーが切れる時刻を約3~4時間後に設定し、睡眠の前半はしっかり眠れるようにしたい。就寝1~2時間前から室内を冷やしておけば、タイマーが切れても朝4時くらいまでは眠りやすい温度が保てる。
下のグラフにもある通り、体温は午前2~4時頃に最も低くなり、その後は目覚めに向かってゆっくりと上昇していくので、朝4時以降は体を冷やさず、体温の自然な上昇を助けることがすっきりした目覚めにつながる。
就寝中に暑さで目が覚めてエアコンをつけると、それまでかいた汗が急激に冷えて体が冷えすぎてしまい、体調を崩す原因になるので要注意だ。
1日における深部体温の変化
④扇風機の風を体に直接当てたまま寝ると、体温が奪われて寝冷えの状態になったり、冷たい空気が鼻や口から入ることで風邪をひきやすくなる。また、部分的に冷えると血行障害を起こすなどの可能性がある。従って、扇風機のみ単独で使う場合は、次のような使い方を心がけよう。
(1)一度壁や天井に当てた風を間接的に受ける。
(2)首振り機能を使い、上向き・微風で体の少し上の空気を混ぜると体感温度が涼しく感じられる。
(3)リズム風の機能を使えば、自然の状態に近いので身体に負担がない
(4)切タイマーは3~4時間後にセット。
(5)2リットルのペットボトルを凍らせておき、タオルを下に敷いた洗面器に入れ、扇風機の前に置いておくと、風が冷やされて冷たく感じられる。(日経グッデイ等より)
日本はもう少し暑い夜が続きそうだし、熟睡するにはエアコンを利用することも必要と思う。フィリピンに居ている時もそうだが日本でも、各部屋に温湿度計を設置している。それを参考に、特に寝室では温度26℃・湿度50%前後にしている。
暑いのを我慢しての熱中症や、睡眠妨害になる暑さを避けるには、贅沢でなく必要なことだと考えたいものだ。