フィリピンは、農地改革法に基づく農地の分配を加速する。マリアノ農地改革相がドゥテルテ大統領の任期満了となる2022年までに約6,210平方キロの農地を同法の対象者に分配する方針を示した。現地紙マニラ・タイムズなどが報じた。
同相によると、計画の第1段階として2019年までに農地改革法が適用される農地4,000平方キロを約38万人の対象者に分配する。その後の3年間を第2段階とし、同法が適用される725平方キロに加え、現在のところ適用外となっている1,486平方キロの農地を適用対象に組み込み分配する。
また、政府は大統領令により、農地の農業以外の目的への転用を2年間禁止する方針だ。マリアノ農地改革相は「分配した農地を保護し、食の安全保障を確実にするため」と禁止の意図を説明。この間は、農地転用に関する申請や認可手続きをすべて凍結すると強調した。
フィリピンでは、土地を持たない農民の所得上昇、貧困からの脱却を目的に、マルコス大統領時代の1972年に農地改革法が制定され、農民への農地分配が進められてきた。農地改革省によると、同法のもとで現在までに4万7,000平方キロが279万人の対象者に分配されたという。
しかし、同相はこれまでの政権が農地分配を進めてきたにもかかわらず、農民の生活向上が実現したことを示すデータがないと指摘。年間10億ドル(約1,034億円)以上とされる輸入食品と農地の転用が農民の所得上昇を阻み、食の安全保障を危機にさらしているとの考えを示した。
ドゥテルテ大統領とマリアノ農地改革相は、農地改革法を強力に推進していく方針で、同法に関する最高意思決定機関で大統領自身が委員長となる農地改革委員会(PARC)をおよそ10年ぶりに復活させた。
同相は「大地主たちが画策してビジネスを立ち上げては農民に利益を還元せずに独占し、状況がここまで悪化した」と主張。これまでの同法施行実態と貧困が解消しない要因を徹底的に追求する機関の新設が必要だと主張した。さらに同相は、より多くの農地を同法の適用対象とするための農地改革省の権限強化や、国営銀行ランド・バンク・オブ・ザ・フィリピンズによる農民支援の拡充を議会に求めるなどしている。
一方、ビジネス面では政府の姿勢が逆風となる見通しだ。今年8月には、ターラック州にあるサトウキビの大規模農園アシエンダ・ルイシタが所有する約3.6平方キロの農地を分配するよう、同省から命令を受けた。
フィリピン商工会議所の幹部は、一連の政府の動きについて「農地転用の禁止は農民の利益となるだろう。ただし、ビジネス面の影響については、もう少し制度の詳細を見きわめる必要がある」と言葉を濁した。(Sankei-Biz等より)
フィリピンでは、以前から土地を持たない農民に農地分配が進められて来たが、勉強もしていなく金も持っていない農民が、農地分配を受けても土地活用のすべを知らず、結局は金持ちに良いように使われているのが現状だ。政府としても、農地分配だけでなく、それで自立できるように指導がもっと必要だ。